Share

緑と白の魔女 4

last update Huling Na-update: 2025-06-27 08:47:30

 闇に包まれた森の中で、満月は手元を照らし、太い幹にロープを頑丈に巻きつけることができた。

 アレックスは、大きな平たい石の割れ目にロープを垂らして降りていく。

 岩の割れ目は、雷が落ちて真っ二つに割れたように鋭い。

「おい、聞こえるか? 痛っ……クソッ。いるんだろ?」

 アレックスはさらに慎重に降りた。

「ここだよ……」

 子供の声と小さく唸る獣の鳴き声。

「マカロニ、静かに……誰なの?」

 茶色にくせっ毛の犬を抱きしめた少年が、裂け目の途中、平らな部分に座っていた。

 アレックスは優しく犬を撫でる。

「あぁ……お前もここにいたのか。俺はアレックス、探偵だ」

「落とし物をして山に入ったら……道を間違えてどんどん奥に進んじゃったみたい」

 少年は青ざめた顔をしているが、元気そうだった。アレックスの顔をまじまじと見つめる。

「犬の声がこの岩から聞こえてきたの。助けようとしたら僕も落ちちゃって」

「お前は怪我はしてないか?」

「うん。でもマカロニが……お腹空いてるんだよ」

 犬は静かに震えていた。最後の力を振り絞り、アレックスに唸ったのだ。

「ジョーイ、親父さんが心配してる……ほらマカロニ、こっちだ。随分と探したぞ」

 アレックスは衰弱している犬、マカロニをそっと両手で包み込んだ。何度か頭を撫でると目を閉じて眠り出した。

「……アレックスって男なの? それとも女の人?」

「……今はどうでもいい。さぁ、登るぞ」

 真夜中……ウィンザー通りに犬を抱えたジョーイと、組合の男たちが笑いながら戻ってきた。

 母親は、ジョーイを見たと同時に堪えていた涙が一気に溢れ出た。

涙を拭うことも忘れ、少年を強く抱きしめた。

*****

数日後、ライチとジョーイがアレックスの部屋ではなく、なぜか私の部屋にいた。

「アレックス!この苺、すごく甘いわ」

「でしょでしょ!」

 ライチは自分が褒められたように満面の笑顔。

八百屋の息子のジョーイは、野菜と果物を持てるだけ持ってきた。アレックスの要望で報酬が果物と野菜になったらしい。

これはかなりありがたいわ。運ぶ手間もなくなったし。

「通りのみんなには、ものすごーく怒られたよ」

「当たり前だ」

アレックスに一蹴される。

「でもマカロニを探してくれたから許してくれたよ」

ジョーイは恥ずかしそうに言って頭を掻いた。

私たち四人はジョーイの差し入れてく
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter

Pinakabagong kabanata

  • 野蛮な彼女の彼女になる方法   無法島の一件 17 きっと大丈夫

    ああ、本当にもうダメなんだ。嫌われたわね。 何も始まってないのに……私が終わらせちゃった。 自分がこんな残酷な人間て知らなかった。アレックスのこと、人を殺せるでしょなんて言ったのよ。酷い。許してもらえないわね。 でもこれは……これは言わせてもらおう。 「わ、わたし……落ち込んだのよ。普通女同士の旅は一つの部屋よ。なのに確認もしないで部屋を別にされるなんて…………」 「…………」 「そんなに私のこと嫌いなんだって思ったんだよっ!」 突然、アレックスは私を抱きしめ、心臓が止まりそうになった。アレックスの声は震えていた。 「嫌いな奴と一緒に船になんか乗れないし、飯も食べない。口も聞かない。そんなに器用じゃない。レベッカ、お前がいなくなったら困る」 私は声を殺して泣いている。アレックスの柔らかい胸に顔を埋めて。恥ずかしいけど、もう仕方なかった。 「わかっただろ? 部屋を別にしたのは、お前のためだ。無法島に来たら、この問題は避けられない」 「狼になっちゃうから? 夜中の12時に? ……動物だから鼻や耳がいいの?」 アレックスは無言だった。 さっきまでは寒いと思っていたのに、アレックスの体温も伝わって、甲板の上は夜風が気持ちよく感じた。 「ローズマリーは知ってるのね」 嫉妬ではない。私は安堵して彼女の名前を出したの。前みたいなやきもちじゃない。アレックスの理解者がいてよかった。心からそう思ったの。 「まあな。あいつは人の感情の色とか、いろいろわかるらしい。だから早い段階であたしがおかしいことに気づいた」 あぁ……ローズマリーって、やっぱり普通じゃないのね。 「怪我をしたときは、狼の姿でローズマリーの家に行った。さすがにあの女でも、ひえぇぇぇって驚いてた」 私は吹き出してしまった。想像がつくわ。 「……あの狼がアレックスなら怖くないわ。私のこと嫌いで避けてたわけじゃないなら、よかった」 「……ありがとうな」 珍しい。否定しないのは認めたと言うこと。アレックスは私の髪をくしゃっと触る。いつもの癖。潮風でくせっ毛はさらにくしゃってなってるし、ベタついているけど。 「ありがとうなんて言えるのね……あの男の子、ジョーイを探すのはでも大変だったでしょ? いくら嗅覚が優れているからって、あんな広い山で

  • 野蛮な彼女の彼女になる方法   無法島の一件 16 月狼

    「そう。そうなの、危機感ゼロよね」 そしてまた沈黙。 波の音が二人の間を隔てていた。アレックスはなにも言わない。長い髪はなす術もなく潮風に持っていかれて顔にかかったまま。 私は続ける。 「あの宿、転落防止で開かない窓が多いのよ……部屋もね。窓が開かないから無理やり割ったのね。そして二階から飛び降りた。狼だって足を痛めるかもね。男にも蹴られていたし」 「……な、なんのことだ」 アレックスの足は少し落ち着きなく動き始めた。  「殺そうと思えば簡単に喉とか噛めたんじゃないのって……」 酷いわ。 「怪我させないように手加減をしたんでしょ?本当はもっと……」 私、すごい酷いこと言ってる。声が上擦っていた。 「あんなやつら噛み殺せばよかったのに!」 私は叫んでいた。ああ……ダメだ……。 でもやめられなかった。 「だから……蹴られてしまったのよ。本当の狼なら私たち大怪我……死んでいたかも」 私は泣いていた。アレックスは黙って私を見つめていた。 「アレックス! 何か言ってちょうだい」 「まぁ……あぁ……不幸中の幸いとしか言いようがないな」 「なによ、それ。前からおかしいと思ってた。真夜中は絶対に私を部屋に入れないし。私がそばにいるときは追い出していたわ! 初めて会った夜もそう」 初めて会った夜は、なにからなにまで狂ってた。でもなぜか今は愛おしいとさえ思う。 「アレックスの部屋の一番奥、たまたま鍵が外れてて扉が開いて見えちゃったの。一度だけ」 私はここで大きく息を吸った。言うべきか一瞬迷った。今なら冗談だと、全部笑い飛ばせる? 抱きついて、嘘よ、ごめんごめんて……。 いや……。もうそれは十分かな。 「奥の部屋、大きな檻があった。あれは自分用なのよね? 動物の毛があちこち床に落ちているのだって……ペット探偵をしているからじゃなくて-」 「わかったよ」 八百屋の子が扉を開けようとして、あのとき開けるなと怒鳴ったわ。すごく怖かった。 「なにが? なにがわかったの?」 「もういい」 アレックスの抑揚のない声。なんにも興味がないときの声だった。 ああ……終わった。 もう私たち、ダメなのかもしれない。

  • 野蛮な彼女の彼女になる方法   無法島の一件 15 離島

    無法島が小さくなっていく。私は黙ってその場から離れた。 「おい、レベッカ。具合悪いのか?」 アレックスが私の腕を強く掴んだ。彼女は眉間にしわを寄せ、困った顔をしている。その表情は嫌いじゃない。 私は無表情のまま、視線をそらした。 「風に当たってくる。船酔いしたみたい」 「はぁ? 今、出航したんだぞ? もう船酔い? まぁ…………あたしは休憩所で寝てくるからな」 「うん……ゆっくりしてきて」 一人甲板に残って、真っ暗な海を眺めていた。いろいろ楽しかったわ、とても。マリアたちのショーもそれはそれは素晴らしかった。ドキドキして興奮するような歌とダンス。 だけど聞いてはいけないこともマリアから聞いてしまった……何か面白かもしれない。 まぁ、その件はカルバーンに着いてから考えよう。 今はもっと大事なことがあるの。これからのアレックスと私のことよ。 ***** 無法島が見えなくなり、しばらく経った。真っ暗な海の上。なにも音がしないより、少し荒れた波の音が私にはちょうどいい。心のざわざわも聞こえなくなりそうで。 船に揺られながら、私はアレックスに聞かなくちゃいけない。 アレックスが暫くして甲板に上がってきた。 「レベッカ……お前、まだ顔色が悪いな。大丈夫か?」 「あぁ、うん。大丈夫よ」 そう言われて、確かに体調は優れないのだろうと思った。でも頭はすごくクリアだった。 「アレックス、大事な話があるの」 聞くなら今しかない。時間が経ったら、アパートに戻ったら、うやむやになって全て曖昧でわからなくなってしまう。アレックスは黙って私の目の前に立った。 「ねえ、アレックスは疲れてないの?」 「あぁ……疲れてるよ。ちょっと寝たけどな。最悪だな。ほとんどただ働きじゃないか。しかもおかしなことばっか」 「そうね……足は平気?」 「あぁ、まあな。もう治った」 「ありがとうね、アレックス。悪い観光客二人から守ってくれて」 「ああ……」 アレックスは返事をした後、はっとして、無言になった。アレックスの失態なんて本当に珍しい。よほど疲れが溜まってるのね。 私はふっと笑った。アレックスは片目をつぶって顔をしかめた。分が悪いと足をガタガタさせたり、片目をつぶるわよね。 私が優位に立つのはこのときが

  • 野蛮な彼女の彼女になる方法   無法島の一件 14 哀悼

    次の日、グエンのお葬式は厳かというよりは、お祭りのように盛大に広場で行われた。 人々は、グエンが落下した場所に(違う場所でとっくに死んでいるのに)花を一輪ずつ置いて、手を合わせた。 今まで忘れ去られていて、誰も鳴らさなかった鐘楼の鐘を、黙祷するようにみんなが鳴らしていった。 私も落ち着いた頃に、一人で鐘楼に登って鐘を鳴らした。鐘楼から見下ろす街並みや、夕陽はとても美しかった。 ずっと見ていたかったけど、後ろから観光客が何人か上ってきていたから、私は長居はせずにすぐ降りた。 よくわからない相手に同情し、人々は悲しみを分かち合い、なんだか感動すらしている。悲劇の舞台を観劇した後のようにー 知らない方がいいことってたくさんあるんだわ……。 結局この日も、無法島に私たちは泊まることにした。アレックスは、ヌーンブリッジのある組織の悪事をいろいろ知っていて、それを料理長やマリアに詳しく教えていた。きっと無法島にとって役に立つのね。 私は厨房でパンを作る手伝いをしたり、美味しく作るコツを教えたりもした。そのとき無法島の噂話もいろいろ聞こえてしまった。 ノーマン・ダークが本当はこの世にいないことなど。数年前に病気になってもう亡くなっていたの。それを知られたら周辺の街がどうするかわかっているのね。 無法島はノーマン・ダークに守られているのよ。それを街の人達もよくわかっているの。 ノーマンを演じていたのは、大衆食堂で暴れた人だった。彼は本当は無法島の人間だったの。これには驚いたわ。 ***** 「最終便、出港します!」 船長が呼びかけ、汽笛が鳴った。 アレックスが叫ぶ。 「ちゃんと給料、本島に持ってこい! カラバーンのメープル通りだぞ!」 「はいはい、まぁ、気が向いたらなぁ」 ウインクするグエン。 「ふざけるなテメェ! どれだけ働いたと思ってんだよ。グエンの金の亡者! くたばれよ」 港に残ったグエンや街の人々は、満面の笑みで手を振っている。マリアや料理長は忙しくて来れなかったのは少し寂しかった。 「アレックスー! また来いよー」 「二度と来るか、お前はアラバマの二番弟子だ! あたしには一生、敵わないんだぞ!」 アレックスは大声で叫んでいる。私は精一杯の笑顔で、みんなを眺めた。

  • 野蛮な彼女の彼女になる方法   無法島の一件 13 守護

    「離してください」  できるだけ低い声でゆっくりと言った。 「黙っててやるからさ、こっちに来いよ。明日になったら一緒にヌーンブリッジに帰ろうや」 「ふーん。よく見ると、可愛いなぁ。俺たちの部屋に来なよ」 かなりまずいわ。 「結構です!」 後ろからも小さめの男に腕を掴まれる。 「いい土産ができそうだぜ。最近パッとしないからな」 「やめてよ。人を呼ぶわ」 「誰が来るってぇ?」 「無法島には保安部隊はいないぜぇ……」 「ノーマンの部下は今夜はいねぇぞ。外出禁止って広場でお達しが出ただろ? 人が死んでんのに……規律を守らないと、こーなるんだよぉ」 なに自分たちに都合がいいこと言ってんのよっ……ギラギラした目が間近に迫ってきて、顔を掴まれる。 やめて……。 そのとき、ガラスが割れる音が響き、目の前に大きな獣が現れた。 真っ赤な光る目ー あのときの獣! これ以上ないピンチの上に、獣に食い殺されるなんて運が悪すぎる。私ってそんなに悪いことした? そりゃ、外に出た私がいけないんだけども! 「なっ……野犬か?」 「違う……こいつ、狼だ」 男二人が私を盾にする。卑劣極まりないんだけど! ……て言うか、これ狼? こんなに大きいの? 「ちょっ、……卑怯者!」 「お前が食われろ!」 「男のくせに、女を盾にするの?」 私も負けじと言い返す。こんな所で死にたくない! 「離して……バラバラに逃げましょう!」 提案したが、二人とも離してくれない。 「う、うるせえ!」 唸り声を上げ、狼は大きな口を開けて私たちに飛びかかる。 ひええええぇ! 狼はなぜか私を飛び越え、大柄の男の腕に噛みついた。男は叫んで、足で狼を蹴り飛ばす。 狼は一旦離れ距離を取ると、唸りながら私たちを赤い目で睨んでくる。 ああ……今まで生きてきて、今が一番ピンチだってば!アレックスのことが頭をよぎる。 もう会えないかもしれない……。 狼はもう一人の小柄な男の足に噛みついた。男は足を振り解こうとするけど、狼は離れない。 「い、痛えー! た、た助けてくれ!」 「くそっ!」 大柄の男が怖がりながらも、また狼に蹴りを入れた。 狼が足を離した瞬間、男二人はなにか叫びながら逃げて行った。

  • 野蛮な彼女の彼女になる方法   無法島の一件 12 危機

    ゆっくりとお湯に浸かりながら今日一日のことを思い返した。このまま寝ちゃいそう……。 アレックスは鐘楼から飛んだり、屋根の上では危なっかしく戦う真似をしたり、男の死体も運んでいる。さすがにゆっくりしたいわよね。 私が協力したことと言えば、広場の観客に混ざって、人々を誘導すること。 『キャー、見て! あれを見て!』 と、鐘楼を指差した女……あれは私なの。大人も子供も、広場にいた全員が煙突のような高い鐘楼を見上げたわ。 他にも、なんて野蛮な!獣ー!とか、キャーやめてー、危ない!など、かなり煽ったの。 そうするようにグエンに言われたから。屋根の上での演技は危なっかしくて、アレックスが落ちるんじゃないかと心配で、ハラハラして本心で叫んでいたけどね。 それにつられて皆もどんどん声を出した。あとはもう言わずもがな……どんどん盛り上がっていった。 広場を後にするときは混乱がないように、早く帰りましょーとか、こっちが空いてますよなんて言ったわ。 話し声が聞こえた。 広場で手配書と同じ顔のグエンが落ちてきて(本物のグエンではないけど)近くで見た見物客は寒気がしたそう。しかもノーマンが触ったら落ちた男は涙を流したって。 ノーマンが、男の体から出てきた魂を奪ったように見えたって得意げに話していて、みんな興味津々に聞いていたわ。まるで怪談話みたいね。 多分なんだけど、あの死体は半分凍っていたから、運んでいるときも冷気が漂って寒かったの。それに人間が触れば体温で、男の体に付いていた氷の粒が水蒸気になって涙に見えたのかもしれないわね。 なんて……そんな科学者みたいなことを言っても、広場の人たちは、あの場で死んだと思ってるし、怪奇現象としか思えなかったわよね……。 それにしても女の子の二人旅って、寝るときまで楽しくおしゃべりするもんだと思ってた。 そういやアレックスと夜を明かしたことはない。まぁ、アレックスはベラベラ語り合うなんて嫌だろうけど……。 ローズマリーとだったら? お泊まり会は開催されたのかな? そんなことを考えながら、湯船から出る。 一人で部屋にいても、お酒が飲みたいわけでもなく、窓から夜の通りをぼうっと眺めていた。 ガス灯の横に、高そうな書類鞄が置きっぱなしなのが見えた。誰だろう……忘れ物かしら? 今日は夕方

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status